A Morning on the Hillside Trail
丘陵径を歩いた、ある晴れた朝の記録
2026.06 — FIELD NOTES
「霧が晴れた瞬間、丘の向こうに広がる樫の海を見た。あの景色を、言葉にしてみたいと思った。」
まだ夜が明けきらぬうちに、私たちは丘陵径の入口に立っていた。空気は冷たく澄み、足元の落ち葉はしっとりと湿っていた。最初の三十分は緩やかな上り坂が続き、樫の木々が徐々に密度を増していく。
中腹に差し掛かる頃、霧が薄れ始め、木々の隙間から淡い光が差し込んだ。振り返ると、歩いてきた小径が谷底へと続いているのが見える。ここでしばらく足を止め、静かに呼吸を整えた。
丘の頂からは、樫の森全体を見渡すことができる。緑の波が幾重にも重なり、遠くの街並みまで見渡せる日もある。
頂上に着く頃には、太陽はすっかり顔を出していた。眼下に広がる緑の起伏は、まるで生きた海のようだった。ここまで登ってきた疲れも、この景色の前では静かに溶けていく。
下山の道すがら、朝には気づかなかった小さな花や、樹皮の模様に目が留まった。同じ道でも、時間によってこれほど違う顔を見せるのかと、あらためて驚かされた。
丘陵径は決して楽なコースではない。しかし、その先に待つ景色は、歩いた分だけ豊かに応えてくれる。次はどんな季節に、この道を歩こうか。今からもう、楽しみにしている。